シリコーン樹脂は耐熱性・耐候性・化学的安定性などの優れた特性を有し、様々な分野で利用されています。シリコーン樹脂を詳細に分析するための前処理方法としてテトラエトキシシラン(TEOS)法、アルカリ融解法、フロロシラン化法等の化学分解法が用いられていますが、これらの分解法はアルカリや高温条件(300℃〜)などの過酷な条件で分解を行うために副反応が懸念されます。これらの分解方法に対し、当社は副反応が起こらないオルトギ酸メチルを用いたシロキサンの分解法を提案します。ここでは、液状シロキサン化合物の分析事例について紹介します。
オルトギ酸メチル、メタノール、硫酸からなる溶液をシロキサンに加えると、比較的低い温度(室温〜100℃)で反応が進行します。MOF分解法は、シロキサンの骨格構造を形成する基本単位(図1)のなかでM、D単位からなるシロキサンのシロキサン結合を選択的に分解することが可能です(図2)。本分解方法は株式会社カネカの特許として権利化されており、当社が実施許諾を取得しています。
(日本国特許第3529854号,第3529858号)
図1 シロキサンの骨格構造を形成する基本単位
図2 MOF分解反応
1.3-ジビニルテトラメチルジシロキサンをMOF分解しました。1.3-ジビニルテトラメチルジシロキサンのメタノール溶液とMOF分解溶液をGC/MS測定した結果(図3,4)、全てのシロキサン結合が開裂してジメチルメトキシビニルシランのみが検出されました。その分解収率は99%でした。
図3 GC/MS測定結果(MOF分解前) 図4 GC/MS測定結果(MOF分解後)
ビニル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)をMOF分解しました。MOF分解溶液をGC/MS測定した結果(図5)、主鎖および末端の分解物を検出することができました。それぞれを定量したところ(表1)、両者とも高い分解収率を示しました。
図5 PDMSおよびそのMOF分解物の構造とGC/MS測定結果
表1 PDMSの分解収率
分解生成物 | 分解収率(%) | CV値(%) |
---|---|---|
主鎖分解物 (ジメチルジメトキシシラン) | 98 | 1.4 |
末端分解物 (ジメチルメトキシビニルシラン) | 102 | 2.9 |
MOF分解法を用いることで、従来法では分析が困難とされていたポリシロキサンの定量的な分解が可能です。さらに、末端の様に微量な部分構造に対して定性・定量分析を適用できます。