分析事例

シラン混合物中のシランカップリング剤の同定と定量(溶液NMR測定)

有機材料と無機材料を結合する働きを有するシランカップリング剤は複合材料の接着、無機フィラーの表面改質等に利用されています。シランカップリング剤は分子内に有機材料および無機材料と結合する官能基を有することが特徴です。今回はシランカップリング剤を含むシラン3種混合物の1H、29Si NMR測定と異種核二次元NMR測定(1H-29Si HMBC)を行うことによって、その構造を同定し、混合溶液の組成比を求めた事例を紹介します。

分析試料・条件

3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)/ ジメトキシジフェニルシラン / テトラメトキシシラン混合物(仕込み組成 38.0 / 32.1 / 29.9 (wt%) )の重クロロホルム溶液を1H、29Si NMR、1H-29Si HMBC測定(VARIAN社製VNMRS600)に供しました。

分析結果

シラン3種混合物の1H、29Si NMRスペクトルおよび1H-29Si HMBCスペクトルを図1に示します。1H NMRスペクトルをみると、3本のメトキシ基由来のピーク、フェニル基由来のピーク、3-グリシドキシプロピル基のピークが検出されています。29Si NMRスペクトルをみると、Siに酸素原子が2,3,4個結合している3種のSiのピークが検出されています。二次元NMR測定を行うことで、SiとHの遠距離相関が観測され、1H NMRで観測される(a)~(c)由来の3種のメトキシ基のピークを決定できました。1H NMRから求めた3種類のシラン組成は38.1 /32.0 / 29.9 (wt%)であり、本測定例では仕込み組成とよく一致しました。本手法を用いることでシラン混合物中のシランカップリング剤の同定と定量が可能です。

図1 シラン3種混合物の溶液NMRスペクトル

図1 シラン3種混合物の溶液NMRスペクトル