分析事例

TMAによるフィルムの線膨張係数測定

物質は温度によって、その長さや体積が膨張若しくは収縮します。この割合を1℃当たりで表したものを熱膨張係数(熱膨張率)と言います。線膨張係数(線膨張率)とは、熱膨張係数の中でも長さが変化する割合を示します。一方、体積が変化する割合を体積膨張率と言います。
TMAによる試料の線膨張係数を測定する場合、通常は膨張・圧縮プローブを用いますが、フィルムなどの薄い試料は自立しないので、引張りプローブを用いて測定します。ここでは引張りプローブを用いたTMAによるフィルムの線膨張係数測定の事例を紹介します。

原 理

試料を引張りプローブにセットし、一定荷重をかけます。この状態から一定速度で加熱すると、温度とともに試料の体積が変化するので、この時の長さの変化量を測定します。

分析事例

フィルム試料2点の延伸方向(MD方向)および延伸軸に垂直方向(TD方向)についてTMAによる引張り測定を行い、それぞれの線膨張係数を求めました。測定チャートの例を図1,2に示します。

図1
図1 サンプルA測定チャート

図2
図2 サンプルB測定チャート

  • 図1:サンプルAのMD方向では軟化点付近から試料の収縮がみられ、MD方向とTD方向で異方性があることが確認できました。
  • 図2:サンプルBではMD方向とTD方向に明瞭な差はみられました。