分析事例

天然存在比の低い同種核間の2次元NMR測定(INADEQUATE)

有機化合物の構造解析をする上で、炭素-炭素の連結性を直接決定することは大変有用です。しかし、13Cの天然存在比は1.1%と低く、13C-13Cが隣接する確率はわずか0.01%にすぎません。このような天然存在比の低い核種のスピンを相関させるのに適した測定法がINADEQUATE(Incredible Natural Abundance Double Quantum Transfer Experiment)です。この測定は、通常、多くの試料および長時間の測定を必要とします。高性能・高分解能の600MHz NMRであれば、現実的な測定時間で2次元スペクトルが得られます。図1に市販色素の13C-13C INADEQUATEスペクトル(部分拡大図)を示します。

図1 市販色素の13C-13C INADEQUATEスペクトル(部分拡大図)

図1 市販色素の13C-13C INADEQUATEスペクトル(部分拡大図)

F2軸は13C核の化学シフトです。二つのカップリングしているスピンは、F1軸において同じ二量子周波数を持ちます。F2軸に平行な横線を追っていくと相関が得られるため、縦横にシグナルを追跡することで炭素のつながりが明らかになります。これにより、分子の炭素骨格をスペクトル上で直接的に追うことができます。ただし、ヘテロ原子の結合があるところでは行き詰まるので、他の2次元NMR法を組み合わせた解析が有効となります。