分析事例

TG-MS法によるポリマーの分解、燃焼ガスの定性分析

TG-MS法は、TGでの昇温加熱により試料から発生したガスをオンラインで質量分析計(MS)に導入しマススペクトルを得る方法です。TG-MS法では不活性ガスであるヘリウム雰囲気下で試料の熱的変化を確認する方法と、酸素を約20%含む擬似空気雰囲気下で燃焼挙動を確認する方法があります。
今回は両雰囲気下でのTG-MS法によるポリスチレンの加熱発生ガス成分の定性を行った事例を紹介いたします。図1にHe雰囲気下でのTG-MS測定結果、図2に擬似空気雰囲気下で行ったTG-MS測定結果を示します。

測定結果グラフ

両者を比較すると、TG曲線から、擬似空気雰囲気下では質量減量開始温度が低いことがわかります。また、DTA曲線から、He雰囲気下ではポリスチレンの分解による吸熱ピークが認められますが、擬似空気雰囲気下ではポリスチレンの燃焼による発熱ピークが認められます。トータルイオンカレントクロマトグラム(TIC)にて、それぞれ300~400℃付近に検出されたピークのMSスペクトルを図3、図4に示します。

MSスペクトル

MSスペクトルから、He雰囲気下では主にスチレンモノマー、ダイマーが検出されました。また、擬似空気雰囲気下では、ポリスチレンが燃焼し、二酸化炭素やベンズアルデヒドなどの酸化物が検出されました。
それぞれ、発生ガス成分に特徴的なイオンを用いてMSクロマトグラムを描き、図5、6に示します。

MSクロマトグラム

この結果、He雰囲気下ではスチレンダイマーはスチレンモノマーよりも少し後に発生していることが示されました。また、擬似空気雰囲気下でもスチレンモノマーは発生しましたが、それよりも二酸化炭素やベンズアルデヒドが多く発生していました。
この様にTG-MS測定により発生ガス成分の定性と発生している温度領域を調べることができます。また、測定雰囲気を変えることによって、発生ガス成分の違いを知ることができます。