分析事例

XRDによるPETボトルの配向性評価

ポリマーフィルムの物性はポリマーの結晶配向に強く影響されます。例えば、PETボトルは用途によって形状や強度が異なりますが、強度の違いは結晶性の違いに関連しており、成形過程で部位により異った結晶配向となる(特定の方向に引き伸ばされる)と考えられます。
ここでは、炭酸飲料等に用いられる内圧に強いPETボトル(耐圧用PETボトル)の部位による結晶配向性の違いを、X線回折(XRD)で評価した例を紹介します。

分析試料

耐圧用PETボトル(図1);図中の①、②、③の3箇所を分析しました。
(PET: Polyethylene terephthalate)

図1 試料写真
図1 試料写真

分析装置

XRD(CuKα線;Debye-Scherrer光学系(透過))

分析結果

全ての回折パターン(図2)は異方的であることから、いずれの部位もPETの結晶は配向しています。しかし、部位間で回折パターンが異なるため、配向状態は異なることが分かりました。
PETの0-11回折線(2θ=16.3deg)におけるφスキャンプロファイル(図3)から、ピーク位置(配向方向)が①、②と③との間で異なることや、ピークの半値幅(配向度)が部位間で異なることが分かりました。各部位での結晶の配向状態の違いが、機械強度等の物性の違いとなっていると考えられます。

図2 各測定部位の回折パターン
図2 各測定部位の回折パターン

図3 各測定部位のφスキャンプロファイル
図3 各測定部位のφスキャンプロファイル(2θ=16.3deg((0-11)面))

(結晶面がPETボトルの高さ方向と平行な場合は、φ=90deg(270deg)にピークが観測されます。)