分析事例

多変量解析(主成分分析)を用いた液晶ポリマーの熱劣化解析(1)

多変量解析とは、膨大なデータから有益な情報を取り出す統計的な手法です。分析データに同手法を適用することにより、試料間の僅かな差を見出したり、有益な情報をあぶり出すことができます。例えば、ポリマーの劣化解析などでは、劣化前後の微小な変化を捉えることができ、劣化に由来するピークを特定することができます。今回は熱劣化させた液晶ポリマー(LCP)を反応熱分解-GC/TOFMSにより分析し、得られたデータに多変量解析(主成分分析)を適用した事例をご紹介します。

分析試料

試料はシグマアルドリッチ社製のPoly (4-hydroxy benzoic acid-co-ethylene terephthalate)(図1)を用いました(未処理品、試料1)。また、熱処理品として同ポリマーを350℃の空気雰囲気下で、0.5および1、2、5時間熱処理しました(試料2~5)。

図1

分析方法

水酸化テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)共存下で試料の反応熱分解-GC / TOFMS測定を行いました。GC / TOFMS -トータルイオンカレントクロマトグラム(TIC)の一部を主成分分析に供しました。

結果

試料1~5をTMAH共存下で反応熱分解して得られたTICを図2(a)に示します。熱処理時間の長短により、強度の増加するピークと減少するピークが存在しました。このGC / TOFMS - TICを主成分分析したところ、第一主成分が99%の寄与率を有しました。PC1ローディングを図2(b)に示します。ピーク1およびピーク3、4は下に凸、ピーク2は上に凸であり、時間に対するピーク強度の増減と相関を示しました。PC1の加熱時間に対する変化を図2(c)に示します。PC1と加熱時間の対数の間によい相関がありました。

図2