分析事例

NMR DOSY法
(Diffusion Orderd SpectroscopY)

DOSYとは

DOSYとは、パルスフィールドグラジエント(PFG)-NMRを応用した分子の拡散現象を観察する一種の2次元NMR法です。
複数の分子種からなる混合物を、それぞれの分子種の自己拡散係数の違いを利用して分離することが可能な方法です。

DOSYの特長

DOSYは、GPCより主に分子量(自己拡散係数)の異なる2~3成分の混合物の分離に適しています。
自己拡散係数と分子量には相関があり、分子量の違いを利用して分子種を分離する方法の一つがGPCです。
GPCでは、カラムを用いて各分子種を物理的に分離しますが、DOSYでは物理的な分離をせずに混合物中の分子種を分離します。

イブプロフェンおよびカフェインの混合物の3次元1H DOSY分析

DOSYの具体例として、イブプロフェンおよびカフェインの混合物の3次元1H DOSY分析結果を図1に示します。
図1上段は横軸が拡散係数となっています。カフェインとイブプロフェンは分子量(自己拡散係数)が異なるため、DOSYにより分離されます。3次元DOSYの残りの2つの軸はともに1Hであり、それぞれのDOSYピークのスライスデータを取り出すと、1H-1H COSYスペクトルが得られます。図1左側のカフェインの1H-1H COSYスペクトルでは、1H核が隣接していないために交差ピークが観測されていません。
これに対して、右側のイブプロフェンの1H-1H COSYスペクトルでは、複数の交差ピークが観測されており、1H核のつながりを読み取ることができます。

フッ素元素と水素元素を分子中に有する化合物の多核(19F)及び1H DOSY分析

図2はフッ素元素と水素元素を分子中に有する化合物の多核(19F)及び1H DOSY分析例です。
19Fと1H観測でDOSYを測定したところ、化合物の多核の19Fと1Hシグナルの拡散係数(DF、DH)が一致しました。

今後の応用

ここでは低分子量化合物の混合物や多核DOSYの例をご紹介しましたが、共重合ポリマーを構成するモノマー単位の分子量分布測定にも応用できます。

図1

図1 イブプロフェン・カフェイン混合物の3D DOSY
(拡散係数・1H-1H COSY)

図2

図2 CHF2CF2CH2OH / SDS 水溶液の19F DOSY(左図)及び 1H DOSY(右図)