モイストウンドヒーリング(湿潤療法)に使用される絆創膏は「先端医療テクノロジーがキズを早く治す」ものとされ、閉鎖療法を利用した比較的新しい創傷被覆材であり、ハイドロコロイドゲルと呼ばれる素材が使用されています。
ここでは市販のモイストウンドヒーリング(湿潤療法)素材(図1参照)の組成分析を行いました。
図1 モイストウンドヒーリング(湿潤療法)素材模式図
試料を図2のフローに従って溶剤分別しました。
図2 モイストウンドヒーリング(湿潤療法)素材分別フロー
表面層はその性状と、1H NMR分析及び熱分解GC/MS分析(図3参照)より、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)及びメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)からなるポリウレタンゲルであると推定されました。また、この画分の灰分分析により、シリカ系の無機物を含むと推定されました。
図3 表面層分析結果
(a)ゲル1H NMR MAS=2.5kHz、(b)熱分解GC/MS
ハイドロコロイドゲルはゲル13C NMR分析(図4参照)より、カルボキシメチルセルロース(CMC)であると推定されました。またこの画分の灰分分析により、炭酸カルシウムを含むと推定されました。
図4 ハイドロコロイドゲル13C NMR分析結果
(MAS=2.5kHz)
粘着剤層は有機溶剤(1)/有機溶剤(2)再沈不溶分と可溶分に分離され、それぞれ1H NMR、熱分解GC/MS法により分析しました。有機溶剤(1)/有機溶剤(2)再沈不溶分は1H NMR、熱分解GC/MS分析(図5参照)の結果、不飽和結合を有するスチレン系エラストマー及び脂環式炭化水素成分であると推定されました。有機溶剤(1)/有機溶剤(2)再沈可溶分についても別途分析し、その組成を求めました。
図5 粘着剤層分析結果
((a)1H NMR、(b)熱分解GC/MS)
モイストウンドヒーリング(湿潤療法)素材分析結果をまとめて表1に示します。
表1 モイストウンドヒーリング(湿潤療法)試料分析結果まとめ
部位 | 推定成分 |
---|---|
表面層 | PTMG/MDIからなるポリエーテル系ポリウレタン及びSi系無機物等 |
ハイドロコロイド粒子 | カルボキシメチルセルロース及び炭酸カルシウム等 |
粘着剤層 | スチレン系エラストマー(SIS等) |
脂環式炭化水素成分 | |
アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル |