分析事例

製造条件の異なるフィルムの固体NMR分析

製造条件を変えることで、結晶化度の異なるフィルムを2種類用意しました(試料1 高結晶化度、試料2 低結晶化度)。このフィルムは元素としてC、H、N、Oに加えてFを含みます。2種類のフィルムを固体13C、1H、19F NMR分析し、比較しました。

(1)13C CP/MAS NMR

3.2mmφ固体FAST MASプローブにて、マジックアングルスピニング(MAS)速度20kHzで13C クロスポーラリゼーション(CP)/MAS NMR測定を実施しました(図1)。試料1、2のスペクトルはよく一致し、その違いが明確ではありませんでした。そこで、両者のスピン-格子緩和時間(T1H)を測定しました。試料1、2の各ピークの平均のT1Hは順に0.83秒、0.49秒でした。結晶成分の多い試料1のT1Hが試料2よりも長く、一次元スペクトルからはわかりにくかった試料間の違いを観測できました。

図1 試料1、2 固体13C CP/MAS NMRスペクトル

図1 試料1、2 固体13C CP/MAS NMRスペクトル

(2)1H MAS NMR

1.2mmφ固体Ultra FAST MASプローブにて、MAS速度20および50kHzで1H MAS NMR測定を実施しました(図2)。20kHzで測定した試料1の1H NMRスペクトルに比べ、50kHzで測定すると有意に線幅が減少しました。両試料のT1を測定したところ、試料1が0.66秒、試料2が0.47秒でした。13C NMR測定結果と同様に試料1が長いT1を有していました。13CのT1H1HのT1の絶対値が異なるのは、前者の測定にCPを使用したためです。

図2 試料1、2 固体1H MAS NMR スペクトル

図2 試料1、2 固体1H MAS NMR スペクトル

(3)19F MAS NMR

1.2mmφ固体Ultra FAST MASプローブにて、MAS速度20、50kHzで19F MAS NMR測定を実施しました(図3)。MAS速度を高くすることでスピニングサイドバンドが主ピークから離れると共に、その強度が小さくなっていることがわかります。両試料のT1を測定したところ、試料1が0.47秒、試料2が0.39秒であり、13C、1H NMR測定の結果と同様に試料1のT1が長いことが示されました。

図3 試料1、2 固体19F MAS NMR スペクトル

図3 試料1、2 固体19F MAS NMR スペクトル