分析事例

走査型プローブ顕微鏡(SPM)による微小領域の機械特性分布分析

SPMは、nmからμmの微小領域について測定できる装置です。SPMによる機械特性分布分析(Peak Force QNMモード)では、Force Curveを高速で連続して取得・解析し、弾性率や吸着力などの各機械特性について画像化します。弾性率や吸着力といった機械特性は組成や分子量などによって異なるため、樹脂の相分離構造やフィラーの分散状態など、様々な分布評価をSPMで行うことができます。

図1. プローブの動作とプローブに働く力の関係、および測定できる機械特性

図1. プローブの動作とプローブに働く力の関係、および測定できる機械特性

SPMによる機械特性分布分析では、先端径が10nm程度に先鋭化されたプローブを試料表面に押し込み(A→B)、引き上げ(B→C)、離脱(C→A)させます。その間のプローブ‐試料表面間に働いた力や試料変形量の変化を示すForce Curveから、弾性率などの機械特性を算出します。これらの機械特性は表面形状と同時に得られます。こうしたデータを数万点取得することで、100μmより微小な領域についてそれぞれの機械特性の分布が得られます。また、一般的にTEM観察では染色によってコントラストを付与する必要がありますが、SPMでは不要です。
図2はSPMでPS/LDPE複合樹脂の機械特性分布を測定した事例です。明るいほど、形状像では高さが高く、弾性率像や吸着力像では値が大きいことを表しており、弾性率や吸着力の違いから海島構造が確認できます。

図2. PS/LDPE複合樹脂のSPM像(左:形状像、中:弾性率像、右:吸着力像)

図2. PS/LDPE複合樹脂のSPM像(左:形状像、中:弾性率像、右:吸着力像)