分析事例

模擬臭による自動車用フロアマット臭気成分の評価

臭気成分の特定にはヒトによる嗅覚評価と機器分析を組み合わせたスニッフィングGC/MS法が有効です。特定された臭気成分で模擬臭を作成し、試料と類似する臭気を再現することができます。また、臭気成分の組み合わせを変えた模擬臭を作成することで、特定の臭気成分が試料のにおいにどのような影響を与えているのか、簡便に評価することができます。

分析試料

試料;自動車用フロアマット
におい質;ゴム臭と薬品臭を強く感じる複合臭

分析方法

試料1cm2を60℃で30分加熱した後、ダイナミックヘッドスペースGC/MS法でパネル※1により臭気主成分の選定を行いました。選定した臭気主成分ピークを二次元GC/MS法によりさらに分離して定性を行いました。模擬臭は、臭気成分を混合して作成しました。

※1)パネルとは正常な嗅覚を有し、嗅覚を用いて香りを判定する者です。

分析結果

1. 臭気主成分ピークの選定

一次元目-スニッフィング分析により、ゴム臭と薬品臭を強く感じる複合臭を構成する臭気成分として5ピーク選定しました。(図1a)参照

グラフ1
図1 自動車用フロアマットの一次元目-GC/MS分析結果

2. 臭気主成分の定性

Peak1~5の二次元目-GC/MS分析を行い(図2)、ライブラリー検索で成分の定性を行いました。主な臭気成分は表1の成分と推定されました。臭気強度については表2を参照ください。

グラフ2
図2 自動車用フロアマットの二次元目-GC/MS分析結果

表1 臭気主成分の定性結果
Peak No. 推定成分 においの質 臭気強度
1 不明 樟脳臭 2.5
2 Dicyclopentadiene 樟脳臭 2.5
3 Dicyclopentadiene 樟脳臭 2.5
4 Acetophenone 焦げたゴム臭 3.5
5 Naphthalene ナフタレン臭 3.5
表2 臭気強度尺度
レベル 評価
5 強烈なにおい
4 強いにおい
3 楽に完治できるにおい
2 何のにおいか分かる弱いにおい
1 やっと感知できるにおい
0 無臭
表3 類似度尺度
類似度 類似度評価
10 差異が分からぬほど酷似している
9  
8 非常に類似している
7  
6 結構類似している
5  
4 やや類似している
3  
2 わずかに類似している
1  
0 類似していない
表4 快不快度尺度
レベル 評価
-4 極端に不快
-3 非常に不快
-2 不快
-1 やや不快
0 快でも不快でもない
1 やや快
2
3 非常に快
4 極端に快
3. 臭気主成分ピーク選定の妥当性確認

主な臭気成分として選定したPeak 1~5を混合して模擬臭1の作成を行いました。類似度評価は表3の尺度を用いました。模擬臭1と試料臭の類似度を嗅覚試験で比較した結果、類似度8.5となり、試料の臭気を再現できました(表5)。
このことから、ピーク選定が妥当であったことが確認できました。

表5 フロアマットと模擬臭の嗅覚評価結果
  模擬臭1 模擬臭2 模擬臭3
構成成分 Peak1,2,3,4,5
(臭気主成分すべて)
Peak1,2,4,5
(Peak3のみを除く)
Peak1,2,3,5
(Peak4のみを除く)
臭気強度 臭気強度3.5 臭気強度3.0 臭気強度3.0
試料との類似度 類似度8.5 類似度5.0 類似度8.0
快・不快度 -2.0 -1.5 -2.0
におい質 ゴム臭+薬品臭 ゴム臭 ゴム臭+薬品臭
4. 臭気成分が試料臭に与える影響の評価

主な臭気主成分Peak1~5を全て混合した模擬臭1と、Peak3のみを除いて混合した模擬臭2、Peak4のみを除いて混合した模擬臭3で嗅覚評価を行い、Peak3とPeak4が試料臭に与える影響を評価しました(表5)。模擬臭2では、臭気強度(表2の尺度参照)、類似度、快不快度(表4の尺度参照)が下がりましたが、模擬臭3では、臭気強度と類似度が僅かに下がったのみでした。このことからPeak3とPeak4を比較すると、におい質に大きく影響を与える成分はPeak3であることがわかりました。

まとめ

本手法では、分析対象の試料から簡便に類似度の高い模擬臭が作成できます。また、試料中の香気成分の組み合わせを変えて模擬臭を作成することで、どの成分が試料の香りにどのような影響を与えているのか評価することができます。