コーヒー豆は銘柄により香りが異なります。この銘柄間の特徴的な香気成分を把握するためには、スニッフィング-GC/MS分析に供するだけでは違いを見出すことが難しく、多変量解析を行なうことが有効です。ここでは市販のコーヒー豆10銘柄の香気成分について評価した事例を紹介します。
試料は焙煎度及び焙煎からの日数を同一とした表1に示す10銘柄のコ-ヒ-豆を用いました。
| 銘柄 | 産地 |
|---|---|
| ブラジル | ブラジル |
| ハワイコナ | アメリカ |
| ガテマラ | グアテマラ |
| エメラルドマウンテン | コロンビア |
| ブルーマウンテン | ジャマイカ |
| モカ・ジンマ | エチオピア |
| ジャバロブスタ | インドネシア |
| キリマンジャロ | タンザニア |
| コロンビアスプレモ | コロンビア |
| マンデリン | インドネシア |
試料10種をダイナミックヘッドスペース(DHS)-GC/MS法により測定しました(n=3)。得られたデータを香気成分データベースにて処理し、香気成分の抽出、およびその成分のピーク面積を算出しました。
抽出した香気成分について、ピーク面積とピーク面積%を変数として、多変量解析法の一つである主成分分析を実施後、多変量解析で得られた結果が香りにどのような影響を与えるかを明らかにするためスニッフィング-GC/MS分析を行いました。
香気成分のピーク面積、およびピーク面積%におけるスコアプロットを図1,2に示します。ジャバロブスタは、ピーク面積およびピーク面積%のスコアプロットで他の銘柄と異なる位置にありました。ハワイコナはピーク面積のスコアプロットで他の銘柄と異なる位置にありました。ジャバロブスタおよびハワイコナに対して香りの寄与率が高かった5成分のピーク面積%を比較しました(表2)。また図1のスコアプロットにて、特徴的なパタ-ンを示したジャバロブスタとハワイコナのスニッフィングを行った結果、寄与率の高かった5成分はいずれもにおいシグナルを検出し、香り成分であることを確認しました(図3)。
ジャバロブスタの香りの特徴は、表2より酢酸の割合が少ないことと4-ビニルグアイアコールの割合が多いことがわかりました。一方、ハワイコナの香りの特徴は、図1のスコアプロット、図3 GC/MS-TICより寄与率の高い5成分を含む香気成分全般のピーク面積の割合が多いことがわかりました。

図1 ピーク面積におけるスコアプロット

図2 ピーク面積%におけるスコアプロット
| 寄与率の高かった成分 | ピーク面積% | ||
|---|---|---|---|
| ジャバロブスタ | ハワイコナ | その他 | |
| 2-フランメタノール | 20 | 24 | 22〜28 |
| 酢酸 | 1 | 9 | 3〜8 |
| メチルピラジン | 10 | 6 | 6〜8 |
| フルフラール | 6 | 7 | 6〜10 |
| 4-ビニルグアイアコール | 9 | 2 | 1〜2 |

図3 スニッフィングGC/MS 測定結果
* 食品(嗜好品)など、微妙な香気成分のバランスやサンプル間の特徴を明らかにしたいというご要望に対し、分析サービスをご提供しています。