分析事例

ハードコート中のナノシリカの分散状態の評価(SPM)

スマートフォンなどに使用されるディスプレイやレンズには、耐擦傷性や耐摩耗性の向上のため、基材表面にハードコート(以下HC)材料が用いられています。このHCに添加されているナノ粒子の状態がこれらの性能に大きく影響することが知られており、ナノ粒子の状態把握には、形状や弾性率を求めることができるSPMによる分析が適しています。本資料では、SPMによりナノシリカの分散状態が異なる2種類のHC表面を分析した結果を紹介します。

分析試料

  • 基材上に成膜したHC 2種類
    (a:ナノシリカが均一に分散、b:ナノシリカが表面側に凝集)

分析条件

  • PeakForce QNM(Bruker 製 Dimension Icon)
図1 分析位置、観察方向

図1 分析位置、観察方向

分析結果

SPMの分析位置を図1に、SPM分析結果を図2に示します。参考として断面のTEM観察像も示します。ナノシリカが均一に分散したHC表面は、ほぼ平滑で弾性率も均一でした。一方、表面にナノシリカが凝集したHC表面は、20nm程度の凹凸があり、凝集したシリカを島とする海島構造が確認されました。

試料 形状像 弾性率像 (参考)断面TEM像
a:均一分散
ハードコート
形状像の画像 弾性率像の画像 断面TEM像の画像
b:表面側凝集
ハードコート
形状像の画像 弾性率像の画像 断面TEM像の画像

図2 HC表面におけるSPM形状像と弾性率像、HC断面のTEM像

SPMによる弾性率測定により、TEM観察されたナノシリカの分散の違いが、弾性率の違いに影響していることが分かりました。