ウイスキーには多数の香気成分が含まれており、銘柄により香りが異なります。これらの違いや特徴を見出すにはスニッフィング(におい嗅ぎ)機能付きGC/MSによる定性分析だけでは難しく、多変量解析(主成分分析)を用いることも有効な手段の1つです。ここではウイスキーの香気成分を多変量解析(主成分分析)により評価した事例をご紹介します。
種類 | 産地 | 種類 | 産地 | ||
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A | バーボン | アメリカ | F | アイラ | スコットランド アイラ島 |
B | アイリッシュ | アイルランド | G | スコッチ※ | スコットランド |
C | スコッチ※ | スコットランド | H | アイラ | スコットランド アイラ島 |
D | ジャパニーズ | 日本 | I | アイラ | スコットランド アイラ島 |
E | バーボン | アメリカ |
※分類上、アイラ島産以外のスコットランド産ウイスキーをスコッチとしております。
希釈した試料をダイナミックヘッドスペース(DHS)-GC/MS分析に供しました。得られたクロマトグラム(GC/MS-TIC)のピークをデコンボリューション(演算処理)した後、香気成分データベースの自動一斉検索(アロマサーチ)を用いて香気成分を同定しました。
同定した香気成分のうち、3回の繰り返し測定においてばらつきが所定の範囲内であった成分に対して多変量解析(主成分分析)を実施しました。
多変量解析(主成分分析)の結果、試料間の差異を示すスコアプロットを図1に、試料間の差異に起因している成分を示すローディングプロットを図2に示します。
スコアプロットでは、本手法でウイスキーの種類が大別されることが分かりました。ローディングプロットでは、ピート由来の複雑で深い香りを有するアイラ種に特徴的なフェノール系化合物が含まれていることが確認できました(表1)。
フェノール化合物 | Odour character(一例) 1) |
---|---|
Phenol | Medicinal Smoky |
4-Ethylphenol | |
2,5-Dimethylphenol |
1)出典:香気成分データベース「Aroma office 2D」
表1 解析により抽出された主なフェノール系化合物(一部抜粋)
複数試料から香気成分の差異や試料間の特徴を把握したい場合に、多変量解析(主成分分析)は有効な手段の1つであると言えます。