形状記憶合金は、ある温度(変態点)以下で変形しても、その温度以上に加熱すると、元の形状に回復する性質(超弾性)を持つ合金であり、機械工学や医療分野などで活用されています。
形状記憶合金は変態点で結晶構造が変化し、その際に発熱および吸熱が起きますので、DSCで測定し、発熱および吸熱ピークを解析することで、形状記憶合金の変態点が分かります。
ここではDSCによるNi-Ti系形状記憶合金の変態点測定の事例を紹介します。
秤量した試料を窒素雰囲気下で変態点予想値より30℃以上の温度まで加熱します。その後一定速度で冷却すると、試料が変態する温度で発熱反応がみられます。発熱反応が終了し、更に30℃以下の温度まで冷却し再び一定速度で加熱すると、試料が変態する温度で吸熱反応がみられます。
冷却過程における発熱反応の開始温度を変態開始温度(Ms点)、加熱過程における吸熱反応の終了温度を変態終了温度(Af点)とします。
直径が異なる(φ6,8,10,12mm)形状記憶合金4点についてDSC測定を行い、それぞれの変態開始温度(Ms点)および変態終了温度(Af点)を求めました。測定チャートの例を図1に、測定結果を表1に示します。
図1 DSC測定チャート
表1 形状記憶合金の変態温度測定結果
(単位:℃)
分析試料 | 試料直径 | 変態開始温度(Ms点) | 変態開終了度(Af点) |
---|---|---|---|
サンプルA | 6mm | 26.8 | 30.0 |
サンプルB | 8mm | 27.6 | 30.8 |
サンプルC | 10mm | 28.4 | 31.1 |
サンプルD | 12mm | 28.5 | 31.6 |