分析事例

魚眼水晶体中タンパク質のMALDIイメージング質量分析(MALDI-IMS)

MALDI-MS(マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析計)のイメージング機能を活用することで、生体試料の組織薄膜切片上に存在する特定の成分(低分子化合物、ペプチド、タンパク質、糖鎖など)の分布を可視化できます。ここでは、MALDIイメージング質量分析(MALDI-IMS)による魚眼の水晶体中に含まれるタンパク質成分の測定を実施した例をご紹介します。

分析試料

魚眼(鯛) 水晶体 凍結切片(20µm厚、図1)

  • 図1 作製した切片のスキャン像
    図1 作製した切片のスキャン像

分析方法

クライオミクロトームにより、魚眼水晶体の凍結薄膜切片を作製しスライドガラス上に採取しました。その後、切片にマトリックス(イオン化補助剤)を塗布し、空間分解能100 µmでMALDI-MSによるイメージング質量分析を行いました。

分析結果

得られたMSスペクトル(図2)から特徴的なイオンを選択し質量電荷比(m/z)によりマッピングした結果、図3に示す像が得られました。検出されたm/z 21130のイオンは、水晶体主成分のクリスタリンと推察されました。水晶体の内側、外側部分のMSスペクトルで検出されたm/z 8815, m/z 8275のイオンとm/z 21130のイオンの像を重ね合わせた結果、それぞれ異なる位置に分布していることがわかりました。

図2 水晶体のMSスペクトル(上:内側部分、下:外側部分)
図2 水晶体のMSスペクトル(上:内側部分、下:外側部分)

図3 水晶体のMSイメージング像
図3 水晶体のMSイメージング像

応用

  • イメージング質量分析を活用し、生体試料中の低分子有機化合物やタンパク質が生体のどの部位に分布しているかを把握することにより、疾病の進行度合い等の情報を得ることができます。
  • この技術は、体内における薬物動態の評価をはじめ、組織に含まれるリン脂質や糖タンパク質の糖鎖の評価にも応用することができます。