分析事例

医薬品の残留溶媒分析(ICH Q3C クラス1 溶媒)

日米欧医薬品規制調和国際会議(ICH)医薬品の残留溶媒ガイドライン(Q3C)に基づいた原薬、添加剤および製剤中に残留する有機溶媒の分析についてご紹介します。
本ガイドラインでは、医薬品の製造において低毒性の溶媒を使用するように勧告しており、溶媒を3 つのクラスに分類しています。その中で使用を避ける溶媒であるクラス1の溶媒を表1に示します。

表1 クラス1 の溶媒(医薬品の製造において使用を避ける溶媒)
溶媒 濃度限度値(ppm) ※1) 使用を避ける理由
ベンゼン 2 発がん性
四塩化炭素 4 毒性および環境への有害性
1,2-ジクロロエタン 5 毒性
1,1-ジクロロエテン 8 毒性
1,1,1-トリクロロエタン 1500 環境への有害性

※1)局方で定める原薬、添加剤および製剤中の残留溶媒濃度限度値(ppm)

第十七改正日本薬局方(2016年4月1日適用) 収載の残留溶媒の同定、限度試験及び定量試験の適用のためのフローチャート(「検出された残留溶媒量の計算」まで一部抜粋)を図1に示します。この分析法にはヘッドスペース-GC法が指定されています。クラス1 の溶媒分析の操作A、Bの分析法のシステム適合性試験項目は、表2,3に示す通りです。弊社ではGMP省令に要求される品質管理体制に従い、システム適合性試験項目の適合をはじめとする精度管理の下、残留溶媒クラス1の分析が可能です。クラス1用標準液クロマトグラム例を図2に示します。

図1
図1 残留溶媒の同定および定量試験フローチャート

表2 操作法Aのシステム適合性試験
システム適合性試験項目 基準 結果
クラス1用標準液 1,1,1-トリクロロエタンピークのSN比 5以上 適合
クラス1用システム適合性試験用溶液 各ピークのSN比 3以上 適合
クラス2用標準液A アセトニトリルとジクロロメタンの分離度 1.0以上 適合
クラス1用標準液 6回繰り返し分析時の各ピークの相対標準偏差 15%以下 適合

※カラム:SH-Rxi-624Sil MS(30m×0.53mmI.D. df=3.0μm)使用

表3 操作法Bのシステム適合性試験
システム適合性試験項目 基準 結果
クラス1用標準液 ベンゼンピークのSN比 5以上 適合
クラス1用システム適合性試験用溶液 各ピークのSN比 3以上 適合
クラス2用標準液A アセトニトリルと1,2-ジクロロエテンの分離度 1.0以上 適合
クラス1用標準液 6回繰り返し分析時の各ピークの相対標準偏差 15%以下 適合

※カラム:SH-StabilWax(30m×0.32mmI.D. df=0.25μm)使用

図2
図2 クラス1用標準液クロマトグラム例