分析事例

透過法による粉末XRD分析

粉末のX線回折(XRD)では、粒子が特定方向に揃う選択配向を抑制することが非常に重要となります。その理由は、選択配向が生じると特定の結晶面の回折ピークのみが強くなるからです。選択配向を抑制すると、ライブラリのパターンに近いXRDプロファイルが得られ、また濃度以外によるピーク強度の変動要因が抑制されるため、選択配向が生じた場合に比べて定性や定量の精度が向上します。
選択配向を抑制する手法の1つに透過測定(Debye-Scherrer光学系)があります。図1に示すように、透過測定の場合は試料調製時に試料を押さえる必要がないため、汎用的に用いられる集中法による反射測定(Bragg-Brentano光学系)に対して、板状や針状粒子などの選択配向を抑制することが可能となります。
ここでは、異方性を有する結晶構造のγ型グリシン(粉末状)の測定を行い、透過測定が選択配向を抑制した事例を紹介します。

図1各光学系の測定での粉末試料の調整
図1 各光学系の測定での粉末試料の調整

分析試料

  • γ型グリシン(単斜晶)

分析方法

XRD(CuKα線;Debye-Scherrer光学系(透過)、半導体検出器)

分析結果

透過測定、および集中法での反射測定で得られたXRDプロファイルを図2に示します。反射測定の場合は110回折線が強く観測されたのに対して、透過測定の場合は110以外の回折線も強く観測されました。そのため、反射測定では選択配向が起きていると考えられ、透過測定では選択配向が抑制されていることが確認されました。

図2 XRDプロファイル
図2 XRDプロファイル