分析事例

ペプチドのNMR分析

ペプチドは近年、中分子医薬品として注目されています。ペプチドにNMR分析を適用することで、アミノ酸配列の決定を行うとともに、溶液中でのコンフォメーションや、相互作用の有無を明らかにすることができます。
NMR分析法の一つである1H-1H TOCSY法は、プロトンの繋がりを明らかにすることができます。そのため、各アミドプロトンに対応するCαHやCβHの化学シフトを決定できます。CαHやCβHの化学シフトからアミノ酸の種類がわかります。
また、NMR分析法の一つである1H-1H ROESY法では空間的に近いプロトン同士の相関を得ることができます。この結果、アミドプロトンを介して両隣のCαHの繋がりがわかります。
1H-1H TOCSY法、1H-1H ROESY法を組み合わせることで、ペプチドを構成するアミノ酸の種類とその連鎖を明らかにすることができます。ここでは、枯草菌が産生する抗生物質であるバシトラシンAのNMR分析事例をご紹介します。

分析試料

  • バシトラシンA(図1)

分析条件

濃度10 mM(14 mg / mL)、D2O / H2O = 90 / 10(vol%)、pH 3

分析結果

Asp、His骨格およびバシトラシンAの1H-1H TOCSYスペクトルを図2に示します。バシトラシンAの骨格の一部およびバシトラシンAの1H-1H ROESYスペクトルを図3に示します。構成するアミノ酸の種類とその連鎖を明らかにすることができました。

図1 バシトラシンAの構造式
図1 バシトラシンAの構造式

図2 Asp、His骨格(左)およびバシトラシンAの1H-1H TOCSYスペクトル(右)
図2 Asp、His骨格(左)およびバシトラシンAの1H-1H TOCSYスペクトル(右)

図3 バシトラシンAの骨格の一部(上段)と1H-1H ROESYスペクトル(下段)
図3 バシトラシンAの骨格の一部(上段)と1H-1H ROESYスペクトル(下段)