バイオ医薬品をはじめとするタンパク質の品質管理は重要であり、特に、タンパク質の二量体・多量体などの凝集体、分解物(低分子量体)は免疫原性との関係から近年注目されています。
これらを簡便に分析する手法として、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)が広く用いられています。ここでは、モデルとして市販のタンパク質混合品、IgG抗体、およびpHストレス試験により凝集化を促進したIgG抗体を分析した事例を紹介します。
SEC分析カラムを用いた液体クロマトグラフ法(検出波長:UV280 nm)により市販タンパク質混合品、IgG抗体およびストレス試験により凝集化を促進したIgG抗体を測定しました。
市販タンパク質混合物を測定した結果を図1に示します。各分子量成分(112 Da~660 kDaの分子量を持つタンパク質など5種)を分離・検出可能であることが示されました。
図1 市販タンパク質混合品のSEC分析結果
IgG抗体(ストレス試験前)を測定した結果を図2に示します。IgG抗体の単量体は保持時間約7.0分に検出されました。保持時間6.3分には、IgG抗体の二量体と考えられるピークが検出されており、その面積%は約0.5%程度であることがわかりました。
図2 市販IgG抗体単品のSEC分析結果(左:全体図、右:縦軸拡大図)
pHストレス試験により凝集化を促進したIgG抗体を測定した結果を図3に示します。先述と同様、IgG抗体の単量体は保持時間約7.0分に検出されました。また、保持時間6.3分にはIgG抗体の二量体と考えられるピークが、保持時間5.8分にはIgG抗体の三量体以上と考えられるピークが検出されました。また、保持時間8.7分に、IgG抗体の分解物と考えられるピークが検出されました。各成分の面積%は、それぞれ単量体:43%、二量体:16%、三量体以上:37%、分解物:4%程度であることがわかりました。
図3 ストレス試験後のIgG抗体のSEC分析結果
(左:ストレス試験後のIgG抗体分析結果、右:ストレス試験前のIgG抗体分析結果(破線)との重ね合わせ)
バイオ医薬品など、タンパク質の品質管理を行う上で、凝集体や分解物を簡便に測定する方法としてSEC分析が有効です。本分析により、試料中に微量(0.5 %以上)に含まれる目的成分の二量体・凝集体や分解物などがどの程度含まれているのかを評価することが可能です。