分析事例

組織切片上のN結合型糖鎖のイメージング質量分析

MALDI-MS(マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析計)のイメージング機能は医療・創薬分野などで注目されています。組織薄膜切片上で酵素処理を行うことで、生体試料中の特定の成分(タンパク質・ペプチド・糖鎖など)の分布を可視化できます。ここでは、マウス肝臓に含まれるN結合型糖鎖構造の分布解析についてご紹介します。

分析試料

  • 正常マウス肝臓、および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルマウス肝臓

分析方法

各マウス肝臓組織の薄膜切片をITOスライドガラスにのせ、酵素処理により、切片上のN結合型糖鎖を遊離させました。その後、空間分解能100 µmでMALDI-MSによるイメージング質量分析を行いました。

分析結果

正常およびNASHマウス肝臓切片上糖鎖のMALDI-MS測定を行いました。特徴的なイオンをピックアップして(図1)、質量電荷比(m/z)により作成したイメージング像の例(図2)を示します。
イメージング像から、正常マウスと比較してNASHマウスの肝臓ではフコースが付加した「フコシル化糖鎖」の量が増加していることがわかりました。(図2 E, F、NASHマウス肝臓切片左側の強度が上昇)。

正常(A)、NASH(B)グラフ
図1 正常(A)、NASH(B)マウス肝臓切片上の任意の位置のMALDI-MSスペクトル
イメージング像
図2 マウス肝臓切片像(A)および切片上の糖鎖イメージング像
(B-F,図1中の▽印を付した糖鎖のイメージング像を表示)

まとめ

イメージング質量分析により組織切片上の糖鎖を可視化できました。糖鎖の他、組織切片上の様々な成分(例. タンパク質・ペプチド、機能性成分など)の分布の可視化・解析への応用も期待できます。