分析事例

糖鎖修飾タンパク質の特性解析(LC-TOFMS)

LC-TOFMS(液体クロマトグラフ飛行時間型質量分析)法は、タンパク質の特性解析(分子量分析、ペプチドマップ、糖鎖分析など)に有用です。ここでは、LC-TOFMS法によるIgG抗体の糖鎖(グリコフォーム・糖鎖付加位置)の事例をご紹介します。

分析試料

  • IgG抗体

分析方法

LC-TOFMS法により、IgG抗体を分析しました。

分析結果

グリコフォーム(糖鎖部分が異なるタンパク質)解析

分子量の分析により、糖タンパク質のグリコフォームを推定することができます。IgG抗体をLC-TOFMS測定し、分子量演算(デコンボリューション)処理により得られたMSスペクトルを図1に示します。その結果、このIgG抗体にはN結合型糖鎖であるG0F、G1F、G2Fが2つずつ5つの組み合わせで付加した5種のグリコフォームがあることがわかりました。

デコンボリューション後のMSスペクトルのグラフ
図1 デコンボリューション後のMSスペクトル
糖鎖結合位置解析

IgG抗体を酵素処理により断片化し、LC-TOFMS測定しました。測定結果について、専用のソフトウェアで解析した結果を図2に示します。解析の結果、アミノ酸配列EEQFNSTFRのペプチド断片のアスパラギン(N、図2左表の赤枠)にN結合型糖鎖(G0F,G1F,G2F)が付加していることが分かりました。

解析結果表
解析結果グラフ
図2 ペプチドマッピングによる糖鎖結合位置の解析結果
(上:検出された糖ペプチドリスト、下:MS/MSスペクトルおよび糖鎖構造の帰属例)

まとめ

LC-TOFMS法により、バイオ医薬品など、糖鎖修飾タンパク質の分子量、グリコフォームや糖鎖結合位置を確認できます。これらの特性を迅速・正確に分析することにより、バイオ医薬品の開発・品質確認を効率的に進めることができます。