分析事例

吸水性ポリマーを加熱した際に発生する水の定量(TG-MS)

TG-MS(熱重量-質量分析)法は、試料のTG-DTA(熱重量示差熱分析)測定で発生したガスをオンラインでMS(質量分析計)へ導入し、ガスを分析する手法であり、試料の熱分解挙動、発生ガス種、およびこれらの発生温度範囲の情報を得ることができます。また、標準物質の検量線を作成し、それを用いることで発生ガスの定量を行うことができます。
本資料では、吸水性ポリマーとして知られるナイロン6の表面に付着した水と熱分解時により生じた水をそれぞれ分けて定量した事例を紹介します。

分析試料

  • ナイロン6(PA6)

分析装置

  • TG-DTA:Rigaku製Thermo plus EVO2
  • GC-MS:Agilent製8890GC/ 5977B Inert Plus

分析結果

He雰囲気下で試料を室温(25~30℃付近)から800℃まで昇温加熱(20℃/min)した際に発生する水をTG-MS法により定量しました。結果を表1および図1(40℃までは試料の重量変化なし)に示します。水に特徴的なイオン(m/z 18)で、図1に示すSIMイオンサーモグラムを描き、それを基に試料から発生した水を求めたところ、室温~273℃付近および346~541℃付近の2つの温度範囲では、表1に示す水が試料から発生したことが分かりました。室温~273℃付近は試料表面の付着水であり、346~541℃付近は試料の熱分解により生じた水であると考えられます。このように、TG-MS法では試料から発生する水をその温度毎に分けて定量することが可能です。

表1 TG-MS法による試料から発生した水の定量結果(単位:wt%)
発生温度範囲 Entry1 Entry2 Mean
室温~273℃ 4.59 4.64 4.6
346~541℃ 7.43 7.41 7.4
図1 試料のTG曲線およびSIMイオンサーモグラム
図1 試料のTG曲線およびSIMイオンサーモグラム

まとめ

TG-MS法を用いて、試料中の付着水や、熱分解時に発生する水分量を把握することができます。