分析事例

消臭剤効力試験(SIFT-MS)

SIFT-MS(Selected Ion Flow Tube Mass Spectrometer)ではリアルタイム&ダイレクトでガスを分析することができ、装置内の化合物ライブラリにより検量線を作成することなく、目的の化合物をpptオーダーで定量することができます。これにより、室内外の空気質のモニタリングや脱(消)臭剤の効果などを確認することができます。
今回は、SIFT-MSを用いて芳香消臭脱臭剤協議会が定める新効力試験法1)を実施し、市販の消臭ビーズの消臭効果を検証した事例を紹介します。

分析試料

  • 消臭ビーズ

分析装置

  • SIFT-MS:Syft Technologies社製 Voice 200 ultra

分析方法

新効力試験法では、初期悪臭濃度(C0)と各時間の悪臭濃度(C)を測定し、その対数と時間をグラフにプロットして得られた傾き(A)を式1に当てはめることで、悪臭物質を90%除去するのに要する時間(t0.1)を算出することができます。今回は、清浄空気を入れた10Lのテドラーバッグに市販の消臭ビーズと特定悪臭物質であるTrimethylamine(TMA)を添加し、経過時間毎にサンプリングした空気のTMA濃度をSIFT-MSで測定し、悪臭物質を90%除去するのに要する時間(t0.1)を算出しました。

式1
式1 t0.1の算出式(C=0.1C0とする)

分析結果

試験開始から6時間までの経時毎のテドラーバッグ内TMA濃度を測定した結果を表1に示します。各時間のTMA濃度(C)/初期TMA濃度(C0)の対数と時間の関係をグラフにプロット(図1)し、得られた傾き(-0.3956)からTMAを90%除去するのに要する時間(t0.1)を式1に基づき算出しました。
その結果、消臭ビーズがTMAを90%除去するのに要する時間(t0.1)は、5.82hとなりました。

表1 テドラーバッグ内TMA濃度
Time(h) TMA濃度(ppm)
0 9.77
1 7.11
2 4.19
3 2.77
4 2.03
5 1.34
6 0.95
図1 グラフ
図1 C/ C0の対数と時間の関係

まとめ

SIFT-MSを用いた新効力試験法により、特定悪臭物質に対する消臭効果を確認することができます。


1) 田中 廣通:におい・かおり環境学会誌 37 (5), 339-354, 2006, 芳香消臭脱臭剤協議会の新効力試験法について,350