合成繊維は、生活用品、衣類、人口毛髪など、幅広い分野で使用されています。その繊維には難燃性を持たせるために、有機系難燃剤(臭素化合物、有機リン化合物など)や無機系難燃剤(金属水酸化物やアンチモン酸化物)が添加されていることがあります。ここではICP-AES法により繊維に含まれる金属元素を分析した事例を紹介します。
合成繊維に硝酸等を混合した強酸を加えて分解し、分解液をICP-AES測定に供しました。また、未分解の残渣が存在する場合は、残渣をアルカリ溶融させ、分解液を合わせてICP-AES測定に供しました。各金属元素の定量結果を表1に示します。
元素名 | サンプルA | サンプルB | サンプルC |
---|---|---|---|
Sb | 5.5 | - | 0.013 |
Al | 0.58 | 2.2 | - |
Ti | 0.49 | - | - |
P | - | 5.3 | 0.010 |
Zr | - | 13.7 | - |
Si | - | 0.10 | 0.14 |
表1より、サンプルAはアンチモン系、サンプルBは有機リン系の難燃剤を含むと推定されます。また、サンプルCは難燃剤由来の特徴的な元素が検出されないことから、難燃性を付与された合成繊維ではないと推測されます。
ICP-AES法では、合成繊維に含まれる金属元素を定性、定量することにより、難燃剤の種類を推定することが可能です。また、分析試料は合成繊維に限らず、半導体材料や包装容器などにも適用でき、それらに含まれる特徴的な金属元素を確認することが可能です。