分析事例

ポリアミド(ナイロン)の融点測定(DSC)

示差走査熱量分析(Differential Scanning Calorimetry、DSC)とは、試料と基準物質を加熱しながら両者の温度を計測することにより、試料の状態変化を観測する手法です。吸熱や発熱を伴う相転移や化学反応を観測することができます。
DSCは樹脂・高分子材料に対しては、融点と融解熱、ガラス転移温度、結晶化温度などの測定や、熱硬化樹脂の硬化反応の観測などに多く使われています。ここでは、DSCによるポリアミド(ナイロン)の融点測定について紹介します。

測定事例

代表的なポリアミドをDSCで測定した結果(DSC曲線)を図1に示します。下向きのピークが試料の融解を表しています。なお高分子なので融解温度には幅がありますが、ピーク頂点の温度を比較しています。また、参考として各種樹脂材料の代表的な融点を表1に示します。
ポリアミド(ナイロン)は、合成繊維や成形品として様々な用途に使用されており、ポリアミド6やポリアミド66などが主に使われます。これらは化学構造が似ているため、樹脂材料の同定に広く用いられている赤外分光分析(FT-IR)のみでは判別することが困難ですが、DSCを用いて融点を測定し、各ポリアミドの代表的な融点と比較することにより、樹脂材料に使われているポリアミドの種類を判別することができます。

図1 ポリアミドのDSC曲線
表1 各種樹脂材料の融点
種類 融点(℃)
高密度ポリエチレン(HDPE) 120~135
ポリプロピレン(PP) 160~170
ポリアミド6 215~225
ポリアミド66 255~265
ポリエチレンテレフタレート(PET) 250~265