分析事例

ポリスチレン(PS)の分子量分布測定(GPC)

ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)は液体クロマトグラフィーの一種です。試料分子と分離カラム固定相との相互作用(吸着やイオン交換)ではなく、分子のサイズによって分子の分離を行う方法です。
GPCの固定相として小さな穴(細孔)の空いている担体が用いられます。小さい分子は細孔の内部に深く入り込みながらカラムの中を移動するため、カラムから溶出されるまでの時間が長くなります。一方、大きな分子は細孔の内部には入りにくくなり、その分早く溶出されます。この時間差を利用して、分子量の異なる分子を分離します。
GPCは、樹脂・高分子材料の分子量分布測定および平均分子量の算出に多く使われています。高分子材料をGPCで測定(GPC測定)するためには、その高分子材料を有機溶媒に溶かす必要がありますので、適切な溶媒を選択することが重要です。また、試料に不溶成分(無機フィラー、カーボン、ゴム成分など)が含まれている場合は、前処理(ろ過)により取り除く必要があります。

測定事例

弊社ではTHF、クロロホルム、DMF、HFIPなどの有機溶媒による、各種高分子のGPC測定が可能です。ここでは、THFに溶解したポリスチレン(PS)のGPC測定事例を紹介します。

3種類のポリスチレン(押出成形品2種、射出成形品1種)の微分分子量分布曲線を図1に、各種平均分子量の算出結果を表1に示します。ポリスチレンの用途やグレードによって、分子量分布や平均分子量が異なることが判ります。

図1 ポリスチレンの微分分子量分布曲線
表1 平均分子量算出結果(標準ポリスチレン換算)
試料名 Mn Mw Mz Mw/Mn Mp
押出成形品 72,000 260,000 520,000 3.7 220,000
射出成形品A 78,000 220,000 450,000 2.9 160,000
射出成形品B 74,000 180,000 310,000 2.4 140,000
  • Mn:数平均分子量
  • Mw:重量平均分子量
  • Mz:z平均分子量
  • Mw/Mn:多分散度
  • Mp:ピークトップ分子量