パルスNMR(TD-NMR)は、外部磁場中の原子核(主に1H)に高周波パルスを印加し、得られる磁化緩和挙動を解析することで、分子運動性や高次構造を評価することができます。高分子材料では、スピン–スピン緩和時間(T2)を解析することで、分子鎖の運動性の違いに基づく結晶部と非晶部の区別が可能であり、結晶化度の比較評価に広く用いられています。
本資料ではポリエチレン(PE)の結晶化度を比較した事例について紹介します。
HDPEとLDPEをTD-NMRで測定を行った結果、緩和時間(T2)の異なる3つの成分(分子運動性が低い成分:主に結晶部、分子運動性が中程度の成分:結晶部と非晶部の境界付近など、分子鎖が部分的に拘束された領域、分子運動性が高い成分:主に非晶部)が確認されました(図1,2)。各成分のプロトン比(%)を表1に示します。

図1 HDPEの自由誘導減衰(FID)
/エコー減衰の模式図

図2 LDPEの自由誘導減衰(FID)
/エコー減衰の模式図
| 分析試料 | 分子運動性が低い成分 | 分子運動性が中程度の成分 | 分子運動性が高い成分 |
|---|---|---|---|
| HDPE | 58 | 40 | 2 |
| LDPE | 40 | 50 | 10 |
本結果から、HDPEはLDPEに比べて分子運動性が低い成分の割合が高く、結晶化度が高いことが示唆されました。
TD-NMRにより観測されるT2分布は、PEの結晶構造を反映して明確な差を示します。HDPEは直鎖構造により高い結晶化度を示すため、分子運動性が低い成分(結晶部)の寄与が大きく、自由誘導減衰曲線の初期勾配が急峻となります。一方、LDPEは分岐構造の影響により結晶化が阻害され、分子運動性が中程度~分子運動性が高い成分(非晶部)が支配的となります。
TD-NMRは前処理をほとんど必要とせず、ポリマー材料の結晶化度や高次構造の違いを定量的に評価することができます。