分析事例

PVCのスズ系安定剤のアルキル基定性分析

1. 背景・目的

ポリ塩化ビニル(PVC)は、成形加工時の熱分解抑制(着色)や長期安定性(耐候性)を維持するために安定剤が配合されます。主な安定剤は鉛(Pb)系、亜鉛(Zn)系、スズ(Sn)系等に分類されます。分析対象のスズ系安定剤は透明な液体であることから、透明性の高いシートやフィルムの用途に配合されます。但し、スズ系安定剤を配合すると透明性の低下や長期間使用された製品の表面にブリードする問題が発生します。これらの問題を解決するため、他社製品に配合されているスズ系安定剤の化合物情報が参考になります。ここでは、スズ系安定剤のアルキル基の定性方法を紹介します。

2. スズ系安定剤の種類

スズ系安定剤の主な種類の化合物構造を以下に示します。

スズ系安定剤の種類画像

3. 分析事例の紹介

スズ系安定剤の代表的なジブチルスズ化合物とジオクチルスズ化合物を臭化フェニルマグネシウムでフェニル誘導体化した物をGC/MS分析しました。フェニル誘導体化されたスズ系安定剤のMSスペクトルを図1に示します。

図1 フェニル誘導体化されたスズ系安定剤のMSスペクトル
図1フェニル誘導体化されたスズ系安定剤のMSスペクトル

ジブチルスズジフェニルとジオクチルスズジフェニルのMSスペクトルから、特徴的なm/z331、387が定性イオンとなることがわかります。実際にPVCから抽出したスズ系安定剤を同様にフェニル誘導体化することでスズ系安定剤のアルキル基が定性できます。