分析事例

塩ビ樹脂中の多価アルコール脂肪酸エステル系滑剤分析

塩化ビニル樹脂(塩ビ)には、成形加工を改善するために滑剤を配合します。一般的な滑剤の分類としては、炭化水素系/高級アルコール系/高級脂肪酸系/脂肪酸アミド系/脂肪酸エステル系/脂肪酸金属系などがあります。
ここでは、塩ビに多価アルコール脂肪酸エステル系滑剤を配合したモデルサンプルの添加剤組成分析を行いました。
はじめにTHF/メタノールによる滑剤の溶剤分別を試みました。脂肪酸エステル系滑剤が分別されたと推定される分別画分のIRスペクトルを図1に示します。この分別画分を塩酸/メタノールで酸分解し、GC/MS法による定性分析を実施しました。GC/MS定性結果を図2に示します。図2の酸分解前後(上段,中段)のGC/MS定性結果から多価アルコールと推定されるグリセリンと脂肪酸エステルと推定されるステアリン酸および12−ヒドロキシステアリン酸が検出されました。図2下段は図2中段で用いた酸分解後の画分をシリル化した結果です。シリル化されたグリセリンのピークがはっきりと検出されました。以上の結果から多価アルコール脂肪酸エステル系滑剤の12−ヒドロキシステアリン酸グリセリンと考えられました。

図1 脂肪酸エステル系滑剤と推定される分別画分のIRスペクトル

図1 脂肪酸エステル系滑剤と推定される分別画分のIRスペクトル

図2 脂肪酸エステル系滑剤と推定される分別画分の酸分解−GC/MS(TIC)酸分解前

図2 酸分解後

図2 酸分解後(シリル化)

図2 脂肪酸エステル系滑剤と推定される分別画分の酸分解−GC/MS(TIC)