近年、廃棄物の焼却による環境中への有害物質の放出が問題となっており、できるだけ廃棄物を分別して、再利用できるものはリサイクル・リユースが進められています。その中で、分別された廃プラスチックが油化等によりリサイクルされる際は、まずプラスチックの組成を把握する必要があります。一般の廃プラスチックには、包装用ポリエチレン類、ラップフィルム、トレー、あるいは一般家電用の耐久プラスチック部材、さらには電気コードといった種々雑多な物質が含まれます。そこで、先ず溶剤分別法による成分分離を行い、種々の分析方法を活用してプラスチックの種類および含有量を明らかにします。弊社では、従来からその組成分析方法をルーチン化し、市場のニーズに応えてきました。以下に、モデル試料の分別・精度評価を行った分析事例を紹介します。
図1 溶剤分別フロー
自社で蓄積したものを含めてライブラリーとして所有する豊富なIRデータ情報を、化合物の同定に活用しています。
各分別画分についての分析同定結果を表1に示します。
表1のfr.12におけるPVC/PMMAの割合、およびfr.20におけるPET/Nylonの割合は、有機元素分析により求めています。
fr.12の塩素元素分析値をPVC量に換算し、また、fr.20の窒素元素分析値をNylon量に換算して、各成分割合を算出しています。その元素分析値と換算結果は表2および表3に示しました。
一方、fr.31のPE/PPの割合は、それぞれのIR特性吸収の強度比から、検量線を作成して求めています。
表4は、上記組成分析結果と使用したモデル試料の組成成分の配合割合との比較を示しています。
表1 モデル試料の配合内容とIR分析および重量分析結果
配合内容 | 分析結果 | ||||
---|---|---|---|---|---|
樹脂成分 | 配合量(%) | 樹脂成分 | 分別率(%) | ||
透明PVCシート | シート中の樹脂成分 *( )内は樹脂成分割合 | 樹脂全体に対する割合 | 分別画分 | IR定性結果 *( )内はfr.中の樹脂成分割合 | |
MBS(7) | 10 | fr.11 | MBS樹脂 | 0.5 | |
PVC(81) | fr.12 | PVC(57.3) | 14.0 | ||
P(MMA/St)ロールフィルム | 5 | PMMA(42.7) | |||
PETフィルム | 10 | fr.20 | PET(66.1) | 14.6 | |
ナイロンロールフィルム | 5 | Nylon(33.9) | |||
PE(ポリ袋) | 35 | fr.31 | PE(49) | 68.6 | |
PPロールフィルム | 35 | PP(51) | |||
fr.13 | エステル系成分 | 2.3 | |||
fr.32 | 不明成分 | 0.1 | |||
fr.33 | − | ≦0.1 |
※IR分析はFT−IR装置を使用して行ないました。
表2 塩素定量から求めた分別画分fr.12のPVCと残量(PMMA)の割合
分別画分 | 塩素定量値(%)⇒ | 塩素定量値から換算したPVC量(%) | 残量(PMMA)(%) |
---|---|---|---|
fr.12 | 32.51 | 57.3 | 42.7 |
表3 窒素定量から求めた分別画分fr.20のNylonと残量(PET)の割合
分別画分 | 窒素定量値(%)⇒ | 窒素定量値から換算したNylon量(%) | 残量(PET)(%) |
---|---|---|---|
fr.20 | 4.20 | 33.9 | 66.1 |
表4 試料の樹脂配合割合と分析値の比較
成分組成 | 試料中の配合割合(%) | 分析値(%) |
---|---|---|
PE | 35 | 33.6 |
PP | 35 | 35.0 |
PVC | 8.1 | 8.0 |
MBS | 0.7 | 0.5 |
PMMA系 | 5.0 | 6.0 |
PET | 10.0 | 9.6 |
Nylon | 5.0 | 4.9 |
その他 | − | 2.4 |