ポリ塩化ビニルおよびその共重合体の分析には、IR、NMR、熱分解GC/MSを利用します。また塩ビ系ポリマー中には微量の不飽和結合、分岐などの異常結合が存在し、これらの分析にはNMRが用いられます。
塩ビ系ポリマーの分子量の指標としては、粘度法で算出する平均重合度が古くから用いられています。
GPC法を用いて分子量分布を測定することにより、平均分子量を算出することができます。また、熱履歴により発生した高分子量成分を検出することも可能です。
塩化ビニル樹脂シートから発生する臭気は多数の原料に由来する複合臭です。
これら複合臭の臭気成分の定性には、ヒトの嗅覚による官能評価と機器分析の組合せが可能なスニッフィングGC/MS分析が有効です。微量のにおい成分に対しては、二次元GC及び分取GCによりにおい成分の分離、濃縮が必要となります。
これらの手法を用いて、塩化ビニル樹脂シートの臭気成分分析を行った例を示します。8種類の臭気成分を特定する事ができました。
ピーク No. |
R.T (min.) |
においの質 | 臭気強度 | 臭気成分 定性分析結果 |
---|---|---|---|---|
1 | 8.8 | 草 | 2.0 | Hexanal |
2 | 9.0 | 樹脂 | 2.7 | 1-Hexen-3-one or 4-Methyl-1-penten-3-one |
3 | 10.5 | 樹脂 | 3.0 | 1-Hepten-3-one |
4 | 11.3 | 溶剤 | 2.3 | Octanal |
5 | 12.4 | 溶剤 | 2.0 | Nonanal |
6 | 12.7 | 材木 | 2.0 | Tetramethyl benzene |
7 | 15.2 | 薬品 | 1.7 | Naphthalene |
8 | 17.1 | ゴミ | 2.0 | Cresol |
訓練されたパネルによるスニッフィングGC/MS分析により、複雑な臭気成分の特定が可能となります。
近年、環境負荷の低減のため、廃棄された樹脂のリサイクル利用が重要となっています。油化等によるリサイクルのためには、廃棄された樹脂の組成の把握が必要になります。
塩ビ組成分析の技術を応用して、塩ビを含む複雑な樹脂混合物の組成を明らかにすることが可能です。
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