電子部品などにシリコーン樹脂はよく用いられていますが、これに含まれる低分子量環状シロキサンが電子部品の接点障害の原因になります。このため、試料を加熱した際に発生する環状シロキサンの量を把握することは重要です。環状シロキサンの種類と量は、加熱脱着(ATD)-GC/MS法により評価できます。今回は、市販のシリコーンゴムを試料として、300℃×30分加熱したときに発生する低分子環状シロキサンの定性・定量分析を行いました。得られたGC/MS-トータルカレントイオンクロマトグラム(TIC)を図1に示します。
図1 ATD-GC/MS-TIC
シリコーンゴムから発生する環状ジメチルシロキサンの3量体(D3 Mw 222)から24量体(D24 Mw1776)までを同定することができました。環状ジメチルシロキサン4量体(D4)の標品を測定して、D4の検量線を作成し(図2)、D4換算で試料中のD3〜D24の定量を行いました(表1)。
図2 D4検量線
表1 D4換算による環状シロキサン定量結果(μg/g)
定量成分 | 定量結果 | 定量成分 | 定量結果 |
---|---|---|---|
D3 | 152 | D14 | 350 |
D4 | 45 | D15 | 370 |
D5 | 14 | D16 | 440 |
D6 | 8 | D17 | 470 |
D7 | 9 | D18 | 530 |
D8 | 10 | D19 | 600 |
D9 | 15 | D20 | 660 |
D10 | 25 | D21 | 710 |
D11 | 49 | D22 | 660 |
D12 | 123 | D23 | 510 |
D13 | 260 | D24 | 340 |
検量線の直線性は良好であり、試料から発生した環状シロキサンの発生量を把握することができました。ATD-GC/MS法では、少量の試料を用いて、種々の樹脂から発生するガスの定性・定量が可能です。