分析事例

ナス中含有成分のイメージング質量分析

MALDI-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計)は合成高分子や生体高分子の質量を把握し、分子量情報のほかに化合物やその部分構造の組成式を求めることに使用されていましたが、近年イメージング機能を有する装置が開発され、食品や医療分野で注目されています。ここでは、イメージング質量分析によるナスに含まれる栄養成分の局在解析についてご紹介します。

分析試料

ナス(図1)

分析法

ナスの凍結切片をITOスライドガラスに固定し、空間分解能100μmでMALDI-MSによるイメージング質量分析を行いました。

図1ナス全体、ナス断面及びナス切片の光学画像

図1ナス全体、ナス断面及びナス切片の光学画像

分析結果

検出された特徴的なイオンをピックアップして、質量電荷比によりマッピングを行いました。得られたイメージング像の一例として、図2にGABA(γ-アミノ酪酸)、ニコチン酸(ビタミンB3)、キナ酸、クエン酸、ナスニンのデータを示します。GABAはアミノ酸の一種で、主に脳や脊髄で「抑制性の神経伝達物質」として働いています。本測定では、種付近に多く存在する結果が得られました。ナスニンはアントシアニン系色素でナスの果皮に含まれおり、紫色を呈する成分です。本測定でも、ナスニンは果皮に含まれるという結果が得られました。このように、イメージング質量分析では、試料中成分の局在を可視化することができます。

図2 ナス切片のイメージング像

図2 ナス切片のイメージング像

図2 ナス切片のイメージング像