分析事例

マイクロチャンバーを用いたHDDの発生ガス分析

発生ガス分析手法は、加熱脱着(ATD)-GC/MS法およびヘッドスペース-GC/MS法、TG-MS法等様々な手法があります。しかしながら、これらの手法で用いる試料量は数mg~数gと限られ、電子部品等の大きな試料の発生ガス分析は困難です。ガラス製のマイクロチャンバーを備えた発生ガス濃縮装置を用いることで、この問題に対応することができます。
本分析事例では、使用環境を模した条件でハードディスクドライブ(HDD)から発生するガスをマイクロチャンバーを用いて分析した事例をご紹介します。

分析試料および分析条件

試料は市販の2.6インチのHDD(縦10cm×横7cm×高さ1cm)を用いました。
試料の加熱はマイクロチャンバーを用いて行い、発生したガスをTenax管で捕集しました。捕集したガスはATD-GC/MSで分析しました。試料の加熱条件は50℃(HDDの使用最高温度)×2hです。

図1 分析試料およびマイクロチャンバー
図1 分析試料およびマイクロチャンバー
図2 サンプリングイメージ
図2 サンプリングイメージ

分析結果

HDDから発生したガスをGC/MS分析した結果、図3上段に示すGC/MS-トータルイオンカレントクロマトグラム(TIC)を得ました。検出されたピークの内、ピーク強度の強い上位5成分を定性した結果を表1に示します。

図3 HDDおよび操作ブランクのGC/MS-TIC((a)HDD,(b)操作ブランク)

図3 HDDおよび操作ブランクのGC/MS-TIC((a)HDD,(b)操作ブランク)

表1 HDDから検出されたピークの定性結果

ピークNo.R.T.(min.)定性結果
12.7n-Butanol
29.11,2,3,4,5-Pentamethylcyclopentene類似物
39.21-(1,3-Dimethyl-3-cyclohexen-1-yl)ethanone類似物
49.52-Ethyl-1-hexanol
510.62-Ethylhexanoic acid

まとめ

マイクロチャンバーを用いることにより、HDDのような製品そのものから発生するガスを捕集し、定性・定量することができます。本分析手法では、30~300℃まで試料を加熱できるため、製品の使用環境を模した条件で分析することができます。また、構成部材片をATD-GC/MS法等で分析することで、着目するガスがどの部材から発生しているかを特定することができます。