電子デバイスはガラスやフィルム等の基板上に様々な材料を積層して造られています。
これらの構造を明らかにするためには、SEMやSTEMといった電子顕微鏡による観察が有用です。
ここでは、タッチパネルに使用されている透明導電フィルムを分析した事例を紹介します。
透明導電フィルムは、基材フィルム上に光学調整層(IM)、透明導電膜(TCO)が積層された構造をしています。断面加工を行って透明導電フィルムの表面付近をSTEM観察すると、基材フィルム/IM/TCOの積層構造や各層の膜厚を評価することができました。
また、EDXによる元素分析により、数10nmのTCO層やIM層の組成も確認できました。
図1. 透明導電フィルムの断面STEM像
図2-1. TCO層の元素分析結果
図2-2. IM層の元素分析結果
また、暗視野像では結晶構造に由来する縞状のコントラストが見られており、明視野像ではほとんど確認できないTCOの結晶化の状態を確認することができました。
図3. TCO層のSTEM像(左:明視野像、右:暗視野像)
次に、TCO層の結晶粒の大きさを評価するため、膜面に対して平行に加工してSTEM観察を行いました。
それぞれの結晶粒は、結晶方位の違いによりコントラストが異なって観察されました。画像処理によりこのSTEM像の結晶粒界を抜き出して解析することで、結晶粒の平均粒径が約115nm、その変動係数が0.570であることが確認できました。
図4. TCO層の平面STEM像(左)と画像処理後のイメージ(右)
断面STEM観察、EDX分析、平面STEM観察、画像解析を行うことで、透明導電フィルムの厚さ、組成、結晶粒径など詳細な構造を明らかにすることが可能です。
これらの方法は、透明導電フィルムに限らず、様々な電子デバイスの構造解析に活用できます。