分析事例

発酵食品のメタボローム解析(LC-TOFMS)

メタボローム解析は、低分子代謝物を網羅的に同定解析することであり、近年、注目され活用の場が増えてきています。食品分野においては、味や香りなどの品質に関わる低分子代謝物の解明に応用することができます。ここでは、市販品の味噌のメタボローム解析を液体クロマトグラフィー‐飛行時間型質量分析計(LC-TOFMS)により実施した事例についてご紹介します。

分析試料

  • 市販品味噌(豆味噌-3種、麦味噌-5種、米味噌-3種 計11種)

分析装置

  • SCIEX社製 Triple TOF6600(LC-TOFMS)

試料前処理

味噌試料を均一化した後、抽出・精製し低分子代謝物の測定検液としました。

結果

11種の味噌の主成分分析を実施した結果を図1に示します。

図1 味噌11種の主成分分析

図1 味噌11種の主成分分析 (左:スコアプロット 右:ローディングプロット)

スコアプロットにより味噌に含まれる代謝物は原料の違いによってグループを形成することがわかりました(図1 左)。グループの差を示す成分を解析した結果、ローディングプロットから、これら原料の違いによる特徴的な成分はLinoleic acid、Citric acid、Isoflavone glycosidesと同定されました(図1 右)。

次に、メーカーの異なる3種の豆味噌の代謝物の違いを見るため、豆味噌の主成分分析を実施しました。その結果を図2に示します。ローディングプロットより、同じ原料でも差を示す成分としてL-Tryptophan、L-Tyrosine等のアミノ酸類、Stearic acid、Linoleic acid等の脂肪酸があることがわかりました。

図2 豆味噌3種の主成分分析

図2 豆味噌3種の主成分分析 (ローディングプロット)

比較試料が2種類の場合は差分分析を行うことで差となる成分を見つけることが可能です。
豆味噌と米味噌の差分分析(2倍以上の差がある成分を抽出するように条件設定)とライブラリー検索を行った結果、2倍以上の差を示す成分は63成分あることがわかりました。差分分析結果の一部を表1に示します。

表1 豆味噌と米味噌の差分分析結果(2倍以上の差を示す成分63成分中一部抜粋)

表1 豆味噌と米味噌の差分分析結果

まとめ

メタボローム解析を活用することにより、食品の風味や香りを特徴づける成分であるアミノ酸類や脂肪酸等を見つけ出すことが可能になります。また、これらの解析手法は培養液や培地成分の解析にも有用です。