糖類(単糖~オリゴ糖)の紫外吸収は190~195nm付近でしか得られず検出が難しいため、誘導体化を行ったり、示差屈折率検出器(RID)や蒸発光散乱検出器(ELSD)を用いたりしてHPLCで測定する方法が有効です。
ここでは、清涼飲料中の糖類をRIDとELSDを用いて分析した事例を紹介します。
HPLC-RID法、HPLC-ELSD法の2種類の方法で分析を実施しました(以下、単にRID法、ELSD法と略します)。
RID法は試料成分と移動相との屈折率の差を検出する方法、ELSD法はカラム溶出液を噴霧して移動相を蒸発除去後、揮発されずに残存した溶質(ここでは、糖)に光を照射し、その散乱光を検出する方法です。ELSD法はRID法と比較すると、検出感度が高く、移動相の組成を段階的に変化させるグラジエント分析も可能であることが特長です。ただし、ELSD法は移動相に不揮発性塩類を使用することができません。
RID法とELSD法を用いて、糖標準品(フルクトース、グルコース、スクロース)の同一濃度の溶液のクロマトグラムを比較した結果を図1に示します。図中、相対強度はフルクトースのピークを1とした時のピーク強度を示します。
図1 糖類標準品のクロマトグラム(左:RID法、右:ELSD法)
図1より、ELSD法の方がRID法よりS/Nが高いため、高感度に分析ができていることが分かります。
ELSD法により、ぶどうジュース(果汁20%、100%)に含まれる糖類を分析しました。果汁100%と果汁20%のクロマトグラムを図2に示します。糖類として主にフルクトースとグルコースが含まれており、果汁20%では、果汁100%で不検出であったスクロースがわずかに含まれていることが分かります。
図2 試料のクロマトグラム(左:果汁100%、右:果汁20%)
各試料の糖類の定量結果一例を表1に示します。試料間で果汁の量(20-100%)は異なりますが、糖組成比率に大きな違いはなく、糖類の含量は11-14 wt%の範囲でした。
試料 | フルクトース | グルコース | スクロース | Total |
---|---|---|---|---|
果汁20% | 6.4 | 4.7 | (0.2)* | 11.3 |
果汁100% | 7.4 | 6.1 | N.D. | 13.5 |
*:括弧内は、検量線を外挿して算出した参考値を示します。N.D.は不検出を示します。
HPLC-RID法では、移動相の組成を変化させないイソクラテック分析により糖類を、HPLC-ELSD法では、グラジエント分析により一度の分析で単糖からオリゴ糖までを定量することができます。検出器の特長を生かし、目的物質の定量をすることが可能です。