食品の味やうまみに関わるアミノ酸は広く知られています。また、2つのアミノ酸からなる「ジペプチド」も、アミノ酸とは異なる物理的・機能的特性を有しており、醤油や味噌などの発酵食品中の機能性成分として近年注目を集めています。
カネカテクノリサーチでは、液体クロマトグラフィー‐飛行時間型質量分析計(LC-TOFMS)およびアミノ酸・ジペプチドのライブラリー(約400種)を用いて、確度の高い分析・解析を行うことが可能です。ここでは市販品の味噌中のアミノ酸・ジペプチドの分析事例をご紹介します。
味噌試料を均一化した後、抽出・精製し低分子代謝物の測定検液としました。
LC-TOFMS測定結果からライブラリー検索を行い、各試料に含まれるアミノ酸、ジペプチドを同定しました。さらに同定結果から主成分分析を実施しました。結果を図1および図2に示します。図1に示すスコアプロットから、味噌の原料の違いでグループを形成することがわかりました。
図1 味噌11種の主成分分析(スコアプロット)
グループの差を表す成分は図2に示すローディングプロットにより確認しました。その結果、豆味噌、米味噌、麦味噌にそれぞれ特徴的と考えられる成分が分離・可視化されました。
図2 味噌11種の主成分分析(ローディングプロット)
ローディングプロットで可視化された成分が各味噌に特徴的なものか確認するため、一例として図2からジペプチド3成分を選択し(赤枠1~3)、強度を抽出しました。結果を図3に示します。
図3 各味噌に特徴的なジペプチドの確認(左:NK、中:IY、右:AH)
図3からNKは豆味噌、IYは米味噌、AHは麦味噌でそれぞれ強度が高いことがわかりました。つまり、これらのジペプチドはローディングプロットに示された通り各味噌に特徴的な成分であることが確認できました。
ライブラリーにより同定した成分を主成分分析することで、味噌の原料毎に特徴のあるアミノ酸・ジペプチドを見出すことができました。本分析・解析は食品の特性解析に限らず、微生物・細胞を用いた物質生産プロセスの管理や培養特性評価にも利用可能です。