分析事例

ナノシリカ表面のシラノール基の分析(化学修飾-XPS)

ナノシリカをはじめとするナノ粒子の凝集性は高く、原料として塗料や樹脂中に分散させる場合、その分散性はナノ粒子の表面状態に強く依存します。そのため、材料設計を行う上で、表面に依存する官能基をはじめとするナノ粒子の表面状態を評価することは重要です。ここでは、X線光電子分光(XPS)によりナノシリカ表面のシラノール基を評価した事例を紹介します。シラノール基とナノシリカはいずれもSi-O結合を有するため、そのままの状態で試料のXPS分析を行っても両者の区別は困難ですが、試料に化学修飾処理を施すことで区別が可能となります。

分析試料

表面状態が異なる2種類のナノシリカ(ナノシリカA、B)
  • ナノシリカA:表面処理なし
  • ナノシリカB:トリメトキシフェニルシランによる表面処理あり

分析方法

ナノシリカ表面のシラノール基にF含有化合物による化学修飾を施しました。
XPS;単色化AlKα線(アルバック・ファイ製 PHI5000 VersaProbe II)

分析結果

図1に化学修飾処理後におけるナノシリカA、Bの表面のC1sスペクトルを示します。ナノシリカAとナノシリカBでC1sスペクトルの形状が異なりました。ナノシリカBの285eV付近のC-C,C-H由来のピーク強度は、ナノシリカAよりも高く、これはナノシリカBのみに施した表面処理剤の直接的な影響によると解釈できます。また、シラノール基の置換によって生じたCF2由来のピークが両試料の292eV付近に観測されました。

図1 ナノシリカA、Bの化学修飾後のC1sスペクトル

図1 ナノシリカA、Bの化学修飾後のC1sスペクトル

O1s、F1s、Si2pスペクトルも含めて、ナノシリカのSiに対するシラノール基の濃度を算出した結果を表1に示します。表1からナノシリカBの表面のシラノール基は、トリメトキシフェニルシランにより、2at%程度フェニルシリル化されたと推測されます。

表1 ナノシリカのSiに対するシラノール基の濃度
試料 濃度[at%]
ナノシリカA 5.6
ナノシリカB 3.7