シリコーン樹脂は電子部品や車載部品の放熱材料(接着剤や封止剤など)に用いられています。放熱効果と放熱材料の構造の相関を把握するためには、内部に含まれるフィラーなどの分散状態を知ることが重要です。放熱用途に用いられるシリコーン樹脂は、樹脂と硬さの大きく異なる無機粒子を多く含むことから、応力の加わる切削を行うとその断面の無機粒子が脱落し、試料本来の状態を観察することができません。そのため、ブロードイオンビーム(以下、BIB)加工を行うことによって平滑な断面を作製する必要があります。
本資料では、市販の放熱シリコーンパッドの内部に含まれる物質の分散状態を把握するため、冷却BIB加工により作製した試料断面のSEM観察およびSEM-EDX法によるマッピング分析を実施した事例をご紹介します。
冷却BIB加工により作製した放熱シリコーンパッドの断面のSEM観察およびSEM-EDX法によるマッピング分析を実施しました。
(BIB:Gatan製 Ilion+ Model691 SEM:Zeiss製 EVO LS15)
放熱シリコーンパッドの断面のSEM観察を実施した結果、シリコーン樹脂中に大きさ10~30μmの不定形粒子と1μm前後の粒子が密に分散していることがわかりました(図1)。また、一部に明るいコントラストで観察される1μm前後の粒子も散見されました。
図1 放熱シリコーンパッドの断面SEM像
次に、SEM-EDX法によるマッピング分析を実施した結果、シリコーン樹脂中の大きさ10~30μmの不定形粒子と1μm前後の粒子は酸化アルミニウム、大きさ1μm前後のコントラストの明るい粒子はFeを含んでいると推測されました(図2)。
図2 放熱シリコーンパッドのマッピング分析結果(冷却BIB加工断面)
この様にSEM観察とSEM-EDX法によるマッピング分析を行うことで、樹脂中のフィラーの大きさや分散状態、材質が分かります。