分析事例

セメント加熱時に発生するCO2の定量分析
(TG-MS)

石灰石(CaCO3)を主な原料とするセメントは製造時に大量のCO2が排出されるため、セメント業界では脱炭素に向けたCO2の回収や再利用の取り組みがなされています。CO2の排出量を把握する方法の一つとして、TG-MS(熱重量-質量分析)法があり、標準物質を用いて検量線を作成することでCO2の定量分析を行うことができます。
本資料では、擬似空気(He/O2=4/1(v/v))雰囲気下で市販のセメントを加熱した際に発生するCO2を定量した事例を紹介します。

分析試料

  • 市販粉末セメント

分析装置

  • TG-DTA:Rigaku製Thermo plus EVO2
  • GC-MS:Agilent製8890GC/ 5977B Inert Plus

分析法と結果

擬似空気雰囲気下で試料を30℃付近から1,000℃まで昇温加熱(20℃/min)した際に発生するCO2をTG-MS法により定量しました。標準物質を用いて検量線(図1)を作成した後に試料から発生するCO2に特徴的なイオン(m/z 44)でSIMイオンサーモグラムを描き(図2)、513~825℃の温度範囲で発生したCO2量を求めました。結果を表1に示します。その結果、今回測定した試料では30wt%のCO2が発生することが分かりました。

図1  CO2検量線
図1 CO2検量線
図2 試料のTG曲線およびSIMイオンサーモグラム
図2 試料のTG曲線およびSIMイオンサーモグラム
表1 TG-MS法による試料から発生したCO2の定量結果(単位:wt%)
発生温度範囲 Entry1 Entry2 Mean
513~825℃ 29.1 30.6 30

まとめ

TG-MS法では任意の温度範囲で試料から発生するCO2を定量することができます。また、測定雰囲気も不活性ガス(He)と擬似空気から選ぶことができるため、使用環境を模した分析が可能です。