Siウエハなどの高い結晶性を有する材料は、その製造や製品化の過程で応力や結晶の歪みが生じることがあります。これらの材料に加わった応力や結晶性の評価を非破壊、非接触で行うことは、製品の性能を確認するために重要な役割を果たします。
ここでは、ラマンイメージングによる応力と結晶性の評価事例をご紹介します。
ラマンイメージング 励起レーザー波長:532 nm
(レニショー製 inVia™ Qontor®)
傷のあるSiウエハの光学像とSi-Si格子振動のピーク位置および半値幅で作成したラマンイメージを図1~3に示します。結晶Siのラマンスペクトルに確認される520.5 cm-1付近のピークは、Si-Si格子振動に由来するものであり、引張応力に起因するひずみは低波数側に、圧縮応力に起因するひずみは高波数側にシフトすることが知られています。また、ピークの半値幅は結晶性の指標となり、半値幅が大きくなると結晶性が低下していると判断されることも知られています。
今回分析したSiウエハ上の傷周辺は図2において周囲より高波数側にピークがシフトしていることから、圧縮応力がかかっていることが分かりました。また、図3において傷部分の当該振動の半値幅は4.5 cm-1付近であり、周囲より大きくなっていることから、結晶性が低下していることが分かりました。
ラマンイメージングにより、非破壊、非接触で応力と結晶性を評価することが可能です。