液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)は、難揮発性物質、高極性物質、高分子物質、熱分解性物質等の分析に適しており、従来GC/MSで分析が困難とされていた物質を測定することが可能です。難揮発性物質の一つである界面活性剤分析にLC-MS/MSを適用した事例を紹介します。
LC-MS/MSを用いて分析を行うには、分析目的物質に適したイオン化法を選択する必要があります。イオン化法としては、主にエレクトロスプレーイオン化法(ESI)と大気圧化学イオン化法(APCI)が用いられます。界面活性剤の種類と適したイオン化法を表に示します。
表1 界面活性剤の種類と適したイオン化法
分類 | 化合物例 | 適したイオン化法 |
---|---|---|
アニオン性 界面活性剤 |
スルホン酸塩(アルキルベンゼンスルホン酸塩など) | ESI 負イオン |
硫酸エステル塩(アルキル硫酸エステル塩など) | ||
リン酸エステル塩(POEアルキルエーテルリン酸エステル塩など) | ||
非イオン性 界面活性剤 |
POE系エーテル型(ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど) | ESI 正イオン |
POE系エステル型(オリオキシエチレン脂肪酸エステルなど) | ||
非POE系エステル型(グリセリン脂肪酸エステルなど) | ||
非POE系アミド型(脂肪酸アルカノールアミドなど) | ||
カチオン性 界面活性剤 |
四級アンモニウム塩型(テトラアルキルアンモニウム塩など) | ESI 正イオン |
非イオン性界面活性剤を分析した事例を次に示します。m/z44間隔のイオンが観測されており、ポリオキシエチレン系の界面活性剤であることがわかります。ピーク2の系列とピーク3の系列のm/z差が28であるのは —(CH2CH2)— に相当すると考えられます。
図1 LC-MS/MSによる界面活性剤の分析例
(逆相HPLCとMSとの組み合わせ)
測定条件:逆相カラム、ESI正イオン検出