分析事例

樹脂の組成分析

樹脂の主成分(モノマー成分)の分析には赤外分光法(IR)・核磁気共鳴法(NMR)・熱分解ガスクロマトグラフ-質量分析法(Py-GC-MS)などが用いられます。主成分の定性・定量に加え、微量モノマー成分や添加物の定性・定量は極めて重要な分析項目です。少量の添加剤を分析するためには、分析対象・樹脂組成に応じて適切な溶剤分別法を選択し、目的成分に応じた機器分析を実施する必要があります。

(1)主成分定性分析

IR
特性吸収から樹脂成分の定性が可能です。ポリ塩化ビニルのIRスペクトルを図1に示します。

IR

図1 ポリ塩化ビニルのIRスペクトル

Py-GC/MS
熱分解により生成するモノマーをGCにより分離し、MSで定性します。高分子を構成するモノマー種の同定が可能です。図2にメタクリル酸メチル/スチレン共重合体のPy-GC/MS測定結果を示します。

Py-GC-MS

図2 メタクリル酸メチル/スチレン共重合体のPy-GC/MS測定結果

NMR
ポリマーを重溶媒に溶解して測定します。化学シフト値からピークを帰属し、定性を行います。図3にプロピレン/エチレン/ブテン共重合体のスペクトルを示します。

NMR

図3 プロピレン/エチレン/ブテン共重合体のスペクトル

(2)溶剤分別

種々の溶媒への試料の溶解性のちがいを利用して成分分離を行います。分別を行ったとしても、各画分は複数の成分からなることが多いため、元素分析・IR分析などを併用して評価します。添加物も各フラクションへ順次分別されるので、クロマト分析・金属分析などにより定性・定量を行います。汎用樹脂であるPVCの分別フローの例を示します(図4)。また、弊社のPVC分析の対象となっている添加剤成分の例を表1に示します。スペクトルデータを独自に構築したデータベースと照合することでスピーディに樹脂組成を同定することができます。

PVC系組成分析

図4 PVCの分別フローの例

表1

塩ビの配合剤の代表例