試料に対してX線を照射すると、電子密度の空間的な揺らぎによってX線の散乱が生じます。散乱角(2θ)が小さな領域で観測される微弱な散漫散乱は、散乱体が小さい程、高角度に散乱する(2θが大きくなる)性質があります。また、試料が周期性を有する場合は散乱したX線が干渉し、回折が起こります。小角X線散乱(SAXS)分析は、一般的に散乱角が5度以下の小角領域における散漫散乱や回折を観測します(図1)。
図1 SAXSの模式図
SAXS分析では散漫散乱を解析し、大きさが数nmから100nm程度の散乱体の大きさや形状を評価します。散漫散乱は電子密度の違いによるため、ナノ粒子は結晶・非晶を問わず、空孔解析にも適用できます。また、散乱体を含む試料の形態も粉体以外に成型体やコロイド溶液のような液体など、制約をほとんど受けません。
また、SAXS分析を行う2θが5度以下の領域は、1.8nm(CuKα線使用の場合)より大きな周期の回折が観測されるため、高分子のラメラ構造などの長周期構造の評価が可能です。