高分子材料表面の官能基の中でもC=Cは反応性が高く、表面改質や接着、重合に関わる反応点として機能します。そのため、C=C量の評価は材料の性能を理解する上で重要です。高分子材料表面の元素の化学結合状態の把握にはX線光電子分光(XPS)が用いられますが、C=C、C-C、C-Hの化学結合を区別することは困難です。そこで、四酸化オスミウム(OsO4)でC=Cを化学修飾し、導入したマーカー元素(Os)からC=Cの有無や量比を評価した事例を紹介します。
各試料の表面に、OsO4を用いた化学修飾処理を施してからXPS測定しました。
XPS;:単色化AlKα線(アルバック・ファイ製 PHI5000 VersaProbe II)
C=Cの化学修飾反応スキームを図1に、化学修飾前後のC1s、Os4dスペクトルを図2に示します。図1に示すように、OsO4はポリブタジエン中のC=Cに付加反応します。化学修飾後のスペクトルには、化学修飾前には無かったOs4dピークおよびC-Oに由来するピークが出現しました。このように、Osのピークの有無から、C=Cの有無を判断することが可能です。
化学修飾処理後のOs4fスペクトルを図3、Os濃度を図4に示します。C=Cの存在量が多いSBRⅡでは、SBRⅠよりもOs4fスペクトルのピーク強度が高く、Os濃度も高いことが確認されました。Os濃度の違いはC=C量の違いを反映しており、Os濃度を測定することで、C=C量を試料間で相対比較できることが確認されました。Os濃度からC=Cの存在割合を算出したところ、SBRⅡのC=C量は、SBRⅠの1.3倍程度であることが分かりました。


OsO4を用いた化学修飾処理とXPS分析を組み合わせることで、上記のように樹脂表面のC=Cの有無、量比の評価ができました。OsO4を用いた化学修飾処理とXPS分析を組み合わせることで、樹脂表面だけでなく、表面改質層、コーティング層、接着層などに含まれるC=Cの有無や量比を評価することができ、材料の性能評価に有効です。また、樹脂の劣化度合いの指標としても、C=C量の評価は有効であり、新品の材料とC=C量比較することで材料の劣化度合いを評価することが可能です。